危機的状況から一転?ハイシーズンのTHE DAYの様な撮れ高を生み出した男
Date:2021.03.07
前日3月6日のBlogでもお伝えした通り昨日のニセコはシーズンに1,2回有るか無いかの非常に厳しい雪のコンディションだった。全面ハードにクラストしたガリガリ君とモナカで、雪の良い所を見つける事が出来ないまま下山する事になった。全員怪我せずに帰って来ただけ良かったと思うくらいの厳しいコンディションだった。「あっちの斜面だったら、もしかしたら良かったのかな?」と思った所に行ったPOWCOMの別チームも同じ状況だったようで「危険なコンディションだった」と言っていた。標高を上げれば数日前の猛烈な風によりガタガタ・ガリガリだし、標高を下げれば一昨日のプラス10度によるサンクラストとウインドクラストによりガリガリとモナカ、風もここ数日強めの風が東西南北と一周し、ニセコからパウダーがなくなったのでは?と思えた感じだった。個人的には、あと幾つかのポイントに僅かな可能性は感じていたが…。
そんな厳しい状況の中でもお客様が居れば、ツアーには行かなくてはならない。勿論、ツアーを翌日に順延や中止にするという判断もあるが、この日の参加者3名の内2名はこの日が最終日なので順延は出来ないし、内1名は昨日の別ツアーにもご参加頂いていて、この状況は十分に理解した上で参加して下さる。他の2名も状況はご理解頂いている。仮に昨日と同じ状況だったとしても文句を云うようなお客様達ではない事は知っている。そしてお客様に朝、非常に厳しい現状を話すと、秋田でサーフ&スノーのショップを営むKさんから面白い答えが返ってきた。「こういう全面カチカチの中、自分は山に行った事が無いし、そこでどういうガイディングをするのかが見てみたい。楽しみ!」と仰ったのだ。なるほど。若手(と言っても、もう40歳の10年以上?だけど)リーダーガイド佐野雄介には、少々気が重くなる言葉だったかも知れないが、確かにそういう見方・楽しみ方もある。
リーダーガイド雄介は、この状況で何処に行くべきか?と昨夜から胃が痛む程頭を悩ませたそうだが、導き出した答えは僕らが羊蹄山の最後の砦としているサンクチュアリだった。因みに僕も昨日あの状況で終わった事が悔しくて、昨夜ずっと「何処に行くべきだったのか?明日は何処に行くべきか?」と悩んでいた。雄介ならそのサンクチュアリを出してくるかな?とも思ったが、僕はそこは先日の猛烈な風で良くないと読んだのだが…。
そのポイントは僕も雄介と何度も撮影ツアーで行き、雑誌にも掲載してきたポイントだが、今季雄介が新しく発見した駐車ポイントからアクセスすると言うので、途中までは僕にとっても初めての場所となった。この日のお客様は全員お一人でご参加の3名で、もう何年もシーズンに複数回毎年ご参加頂いているようなリピーター様達だが、皆羊蹄山は初めてだと言う。皆さん、まさかこんな状況で羊蹄山に行く事になるとは思わなかったという感じだ。そんなワケで、皆さんの初めての羊蹄山はこうして唐突に始まったのだった。
新しい駐車ポイントに到着すると、昨日から24時間降雪が5cmあったとは言え、明らかに雪の状況が昨日の山や今朝のPOWCOM周辺とは違った。木には雪が載っているし、足元はパウダーだ。実際の斜面はまだどうか分からないが、これは期待が出来る!昨日が昨日だっただけに、否が応でも期待に胸が広がる。実は、雄介は昨日の夕方実際にこの駐車ポイントまで来てみたらしく、その時点で結構雪が降っていたし、この雪の状況を確認済みだったと言う。
僕らは一気に希望に満ち溢れた感じとなり、一歩ずつ沈む雪にパウダーの感触を味わいながら歩いて行った。また初めての場所は、やはり新鮮で面白いものである。不測の事態に備えて、歩きながら地理的に色々と情報収集もしなくてはならないのだが、それが久しく無かったので面白かった。基本的に植林の林道を進んで行くのだが、植林なので所謂完全な自然ではなく、作られた自然と言うか何と言うか、思いっきり人の手が入った場所なのだが、とても綺麗に感じ、自ずとシャッターを押す指も軽くなり、沢山シャッターを切ってしまった。
新しいルートから僕の勝手知ったる滑る斜面の場所まで歩いてきたが、変わらずパウダーだ。しかも、どんどん天気が回復していて、朝の内はあまり光が無い感じだったが、快晴へとなっていった。しかし、雪が薄い所と深い所が、同じ斜面の中でかなり混在している事が歩いていて分かる。難しいコンディションである事は予測出来たが、スプレーは飛ばせそうだ。
そこからは急登もあり、スノーシュー部隊もシール部隊も所々苦戦を強いられながら登って行く。いつもは結構風を喰らっていて、そこから上は諦める場所も僕の予想に反して見た目は良さそうなので、頑張ってもう一段上まで登る事にする。下界の景色も見えるようになり、羊蹄山っぽさも味わえた。登り始めから3時間、ようやくドロップポイントに到着した。
登りながら分かっていたが、ガリガリの上に非常に軽い雪が載っていて、それが深い所と浅い所が見た目が同じ中で混在する難しいコンディションではあるが、上っ面の雪は最高、天気も最高、僕の大好きなド逆光が作れて光も最高、メンツも最高、昨日の状況から比べたらもはや天国だ。写真は間違いなく、良い写真が撮れるが、この後の斜面も頭に入れながら、羊蹄山っぽさやバリエーションも考慮して、レンズ選びとカメラポジションの戦略を練る。「よし、では始めようではないか!!」
1本目、まずはこの厳しい状況の中、羊蹄山のこの斜面をチョイスしたリーダーガイドの佐野雄介からドロップイン。いきなり途轍もないスプレーがド逆光の中に舞い上がる。撮っている僕も想像を遙かに超えていたのでビックリした。滑りは、いつエッジが抜けないかとずっと気が抜けないコンディションだったようだが、スプレーの大きさとその状況のギャップが凄まじい。続いてのお客様も、とんでもない大きさのスプレーを巻き上げて滑って来る。滑っている本人はヒヤヒヤしながら滑っているようだが、撮り終わった僕は笑いが止まらないと言うか、昨日とのあまりのギャップに夢でも見ているような不思議な感覚だった。これは夢か?現実か?そんな感覚にも陥った。でも、カメラには現実としてちゃんと記録されているようだった。滑り手達も、滑り終わったらもう笑うしかない、笑いが止まらない、そんな感じだったに違いない。
2本目は、風の抜ける尾根なので移動という位置づけで羊蹄山らしい下界を絡めたバックショットを撮り、3本目は滑り的には大本命の沢地形。滑り出しは引き続き気が抜けないコンディションのようだが、徐々に良くなり大きなスプレーとともに歓声が上がる。4本目は少し登り返して、沢の側壁で光と木漏れ日とラインを計算した良い写真を確実に撮るためにリーダーガイドの雄介に頼んだ一本だ。全員がノートラックのバーンで撮影が出来るように、一人ずつ滑る位置と撮影位置をズラして撮影していった。
そんなこんなで雄介の読みが見事に当たり、そこに天気と光が見事にマッチし、この日のニセコとは到底思えないハイシーズンのTHE DAYの様な撮れ高をこの状況の中で導き出してくれた。
Powder Company Guidesのガイド達は、その日のニセコのベストポイントを探り当て、そこにゲストを導き、僕はそこで光とラインを読み、写真にする。いつもやっている事だが、素晴らしく良い形が現れたツアーとなった様に思うし、Powder Company Guidesの真髄を僕も見せて貰った気がする。きっと、この日テールガイドを務めた社長の高久智基氏も同じだったと思う。智基君は、第一期門下生として10年前?にPOWDER COMPANYの門を叩いた雄介の成長を目の当たりにして、きっと凄く嬉しかったんじゃないかな?
木には雪が付き、足元はパウダー、期待に胸を膨らませ、僕も初めてのルートで目的地を目指す。
植林の林道なのだが、とても綺麗でフォトジェニックに感じた。
植林の森を奥へ奥へと進む。その足跡は深くクッキリと伸びて行く。
途中から天気は快晴となり、とても綺麗な光となった。狙っていたアングルに入ると、思わず「うわぁー、ムッチャ綺麗!!」と声が出てしまった。
柔らかく長く伸びる木漏れ日が綺麗だった。
下界が見えるようになってきた。目的地までもうひと頑張り。
一本目、途轍もなく大きなスプレーを上げるYさん。
この状況で「どういうガイディングをするのか楽しみ!」と語っていたKさん。驚きのツアーとなりましたね。
怪我もあって2年ぶりにご一緒した唯一スキーで参加のTさん。クラストした急登でのシール登攀頑張りましたね。怪我を乗り越えて迎えたこの日、羊蹄山も歓迎してくれましたね。
スプレーを飛ばしまくった皆の落書き。
代打逆転サヨナラ満塁ホームランみたいな活躍をした、本日のリーダーガイド佐野雄介。
第一期門下生雄介のガイドを見て、何を思っただろうか?本日のテールガイド高久智基社長。
Author: Kage Photo
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