PHOTO SESSION BLOG

雪崩全身埋没事故に遭遇し救助へ。いつまでも笑って良い雪を滑るために…。

Date:2024.12.28

こんばんは、Kageです。
今日は昨日もご参加頂いた2名様と一昨日ご参加頂いた1名様の計3名の常連様とリフトを使ったBCツアーにてPhoto Sessionしてきました。

一昨年(?)まではPOWCOMのBCツアーにはBC LiftとBC Hikeという風にリフトを使ったサイドカントリーとスノーシューなどを使ってハイクするメニューに分かれていたのだが、様々な理由に拠りBCツアーに統合され、お客様と相談の上ガイドの判断でリフトを使うか使わずにハイクするかとなったのだが、近年ツアー料金やリフト代の値上がりにより実質丸1日リフトを使ってゲートからアクセスするBCツアーは殆ど開催されなくなっていた。しかし、今日は常連様のご意向にお応えする形で、久しぶりに朝からモイワスキー場のリフトを使ってゲートからアクセスするBCツアーを開催する運びとなった。それには様々な理由があるのだが、現状山はまだブッシュが多く、ハイクラインが大変だったり滑走するラインが狭かったりとハイクの労力に対して滑走満足度が充分に得られる斜面が少なく、それに対してモイワのゲートからアクセスするBCエリアは比較的ブッシュが少なく斜面が出来上がって来ているし、昨日は強風の影響でリフトの運行時間とゲートの開いている時間が短く殆ど滑っている人が少ない上に、昨日の風の吹き溜まり斜面でタップリと雪が積もっている事、今日のお客様は皆さん先日ハイクして疲れている事、今日は土曜日で年末年始休みに入った人などでまだ狭いBCエリアに人が多く入り込む可能性があることなどの理由からだった。

そして、そんな久々のモイワでのツアーで雪崩全身埋没事故に遭遇した。そもそも25日の深夜に+3.4℃まで気温が上がり、その後強い風が断続的に吹き荒れ、パックされて温まった雪の上に強風で運ばれて来た雪が積もり、降雪量はそれほど多くはないものの、25日以降「この先数日は特に注意」と僕らの周りでも雪崩への警戒レベルが上がっていたし、POWCOMの毎朝の朝礼でも議題に上がっていた。

夜中1~2時頃に強風が落ち始め、朝8時過ぎから晴れ始め、雪も安定に向かい始めるかなと予想していた。しかし、一本目滑った時にも若干破断する事が確認されたし、近くの別の場所を滑っていた仲間からも破断したとの情報が入ってきていた。それもあって僕らの後を滑って来た友達にもその事を伝え、「あちこちで破断しているから注意が必要。充分気を付けてね!!」と忠告していた。にも関わらず、次の1本で彼らはよりによってモイワで一番雪崩れる可能性の高い危険なラインに滑り込んで雪崩を起こしてしまったのだった。

丁度僕らが2本目の撮影に入ろうと、僕が先にカメラポジションに移動した時、左約40mの所にある沢のボトム付近に居る友人1人の姿が見え、「雪崩て埋まった!!」と言う声が聞こえた。僕が彼に「大丈夫?助けに行こうか?」と尋ねると聞こえないのか返答が無い。先程彼らは3人で滑っていて、その内の一人の姿しか僕の位置からは確認出来ない。沢の中腹には破断面約30cmで幅数10mの雪崩れた跡が見える。もしかしたら2人埋まっているのかもしれないが、返答が無いので状況が分からない。「助けて!」とか言ってくれたら直ぐに行動に移せたのだが、その同行者の友人もそれほど慌てている様子にも見えなかったので雪崩れて埋まったけど大丈夫だったという話だったのか、今まさに埋まっていて救助が必要なのか、ちょっと分からない。上部に居る本日のリーダーガイド佐藤岳に無線で「もしかしたら誰かが埋まっているのかもしれない」と伝えると、岳が様子を見に向かってくれた。僕も数10mの横移動と登ることになるが急いで向かう。岳が上部からビーコンサーチしながら降りて最小1.5mの所までサーチし、埋没者は1人。プロービングに切り替えようとしたその時、雪の下から声が聞こえた。間違いないこの下に居る。「今助けるから待ってろ、頑張れ!!」と同行者が叫び、僕、岳、同行者の3人で急いでショベルで堀る。その間にテールガイドの中村にモイワスキー場への連絡とPOWCOMガイドでありニセコウインターガイド協会会長の山田誠に連絡し、ニセコ雪崩調査所の新谷さんにも連絡をして貰う。ショベルで掘り始めて暫くして偶然近くを通った外国人ガイドもショベリングを手伝ってくれ、身体の近くを掘る人と掻き出した雪を更に遠くへ掻き出す人、疲れたら交代と自然にフォーメーションが出来ていた。3分位でうつ伏せ状態で埋まる頭を発見し気道を確保。意識はハッキリしている。全身を掘り起こすには7分くらいを要したが、運良く怪我もなく問題なさそうでホント良かった。

話を聞けば、先程まで一緒に滑っていた友人とは別行動となり2人で滑っていて、まず埋没者が先に沢を滑り沢ボトムで転んでしまい(?)一旦板を脱いでいたところ、後ろを滑る同行者が雪崩を引き起こしてしまい、沢ボトムに居た仲間が全身埋没してしまったようだ。

彼らの行動で疑問に思う点が幾つかある。
1. 何故一本目の際に、破断面も見せ、あれほど忠告したのにモイワで一番危ないラインに次の一本で行ったのか?
2.何故先を滑る仲間が安全な所に行ったのを確認してから滑らなかったのか?同時滑走はしてはならない。
3.何故僕が見た時に同行者は埋没者より下に居たのか?深い雪を登るのは大変で時間が掛かるので、埋没者を探すなら必ず上部からゆっくり確実にビーコンサーチする必要がある。
4.動転していたのか同行者が僕の問いに返答が無く、状況把握が遅れた。無線の重要性を再認識。

逆に良かった(ラッキーだった)ことは、
1.埋没者は当初上部に雪煙が見え、咄嗟に雪煙に背を向けたことで結果うつ伏せ状態で埋まり、そのため口が下だったので声を出すことが出来たし、呼吸出来た(理想は埋まる瞬間に口と鼻を手で覆い気道を確保する)。
2.偶然板を外していたので、もしかしたら骨折や怪我も無く、板がアンカーとならずにそれほど深く埋まらなかった可能性がある。
3.雪崩た跡のデブリの雪が通常は硬く固まってしまうがとても柔らかく、現場まで登るのは大変だったが、とても掘りやすかったし、怪我も無く済んだ。
4.偶然埋まった直後に僕らが近くに居たし、しかも知り合いだったし、僕らは無線で連絡出来るので連携や連絡がスムーズに行えた。
5.当たり前の事ではあるが、ちゃんとビーコンを持っていて機能しており、スコップなど三種の神器を持っていた(ビーコンも反応無く、声も聞こえない、ショベルも無かったとしたらと考えると成す術がないと言うか難航した)。
6.複数人で滑っていた事。今回は同行者が雪崩を誘発してしまったのだが、同行者が居たから僕らは気付く事が出来た。もし1人で滑っていて誰も雪崩で埋まった瞬間を見ていなければ、破断面は見えてもわざわざビーコンサーチなど捜索はしなかったと思う。
7.かなり訓練された外国人ガイドも偶然近くを通り直ぐに手伝ってくれた。
8.自分も含め救助に当たった人は非常に落ち着いていたし、状況が分かってからは迅速に統率の取れた行動が取れていた。

これは彼らの行動を責めるためではなく、皆さんにこれを機に今一度自分達の行動を見つめ直すキッカケとなってくれればと思いここに記した。山には100%の安全はなく、自分達は大丈夫なんて保証は全くない。明日が我が身。今日のことは僕らにも、今日救助中に待ってくれたお客様達にも、もしかしたら事故に気付いた近くに居た人も、もちろん彼らにも、良い機会だった。勿論それは埋没者が怪我も無く、無事に笑顔でハグ出来たからに他ならない。丁度ツアー終了後にアンヌプリにあるPowder Companyのオフィスに彼らが笑顔で挨拶しに来てくれた。その二人の笑顔の写真も撮らせて貰ったが、ここでの掲載は差し控えるがとても素敵な笑顔だった。

話を聞けば「埋まって1分位で死を覚悟した。」と、そして怪我はなかったが実はおしっこを漏らしてしまっていたらしい。そう言えば人は死の前など恐怖を感じると失禁する事があると聞いたことがある。
救助を手伝ってくれたコロラドから来ていたアメリカ人ガイドに、「過去に30件くらい埋没事故の救助を行っているが殆どが死亡だった。今日は俺が来て1分後にはもう気道確保されていた。お前は本当にラッキーだ。宝くじを買いに行け!!」と言われたそうだ(笑)。

皆で笑って、ハイタッチして、ちゃんと家族の元に帰れるように、これを機に今一度考えてみよう。いつまでも良い雪を滑っていられるように。
皆様、良いシーズンと最高のスノーライフを過ごしましょう!!


これが救出後の事故現場。写真中央左上に破断面がハッキリと見える。右下に見える黒い点二つが埋没者と同行者の2人組。




今日こんな晴れを誰が予想しただろうか?最高の一日と危険は本当に隣り合わせだ。救助後にツアー再開し、最初に滑り降りたSさん。




最高の雪に青空、申し分の無い最高のコンディションと思えるが、そこに危険が潜んでいる。キメ細かなスプレーを上げるTさん。




気持ち良さそうにターンをするYさん。




ピーカンパウダーに極上のノートラック斜面を滑り終えた一本目。




息を呑むような美しい光景が沢山あったのだが…。




この写真を撮った約3分後に事故に遭遇。救助後事故現場の写真を撮ったのが19分後。約15分くらいの救助活動だった。




今日の救助活動は彼が居てくれたからこそ、本日のリーダーガイド佐藤岳。




救助の連絡係を担ってくれた、テールガイド中村美峰子。

Author: Kage Photo

kage

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