Tent Tour Day1 : 荷上げ~滑走編
Date:2019.04.13
6:53にこれ以上ない程全てが完璧に整った朝焼けセッションから下山し、僕らは満足感と達成感と興奮から既にやり切ったような感覚に達していた。しかし、これはまだテントツアーの第1章に過ぎない。でも、これだけの素晴らしい条件の中セッション出来たので、もう今回のテントツアーが大成功と言っても良いほどだったのは間違いない。早々にしてなんとも有難い展開だ。
本来の集合時間である8:30から30分遅らせた9:00に再集合とし、一旦Powder Companyの事務所に戻ったり、ホテルに戻ったり、それぞれ朝食の時間やキャップ道具のパッキング時間とした。
皆大きな荷物を抱えて再集合し、お客様5名とガイド2名、そして僕の計8名に大荷物ではハイエース一台に乗り切らず、車二台でテント場へのアクセスポイントに向かい。最終的に荷上げするためのパッキングにして10:20僕らはキャンプ地に向けて登り始めた。通常のBC道具に2日分の食料と水、食器類に防寒着、シュラフやマット等々、かなりの重さになる。しかし、皆さん去年も参加された方ばかりなのでパッキングの仕方についても、それぞれ考えて来られているのが感じられる。大き目のバックパックを新たに購入した方もいらっしゃった。足りない装備に関しては貸せる範囲でお貸ししており、今回もシュラフやマット、防寒着、大型バックパックなどを貸し出した。装備の無い方でも興味があればご参加頂き、普段の生活はおろか、普段のBCツアーでも絶対に味わえないものを多くの方に体験して貰いたいという思いからだ。よく「雪山でテントなんて寒いでしょ!?」と質問をされるが、勿論寒い日もあるが、基本的にはこの時期の最低気温はそんなでもないし、きちんとした装備さえあれば誰でもテント泊が出来ると僕は思っている。問題はいつもより重たい荷物を持って歩く体力と気力、そして何より興味さえあれば何とかなる筈だ。
ここ数年興味を持ってご参加頂く方が増えてきていて、大人気のツアーとなっていたが、今回は開催の1週間位前までは参加予約が2人しか居なかった。しかし、土壇場で3名の方が仕事の都合を何とか調整し来てくれる事になった。だが、今回はスタッフの数が過去最高に少ない。多い時では5~6人スタッフが居た時もあったが、今回はリーダーガイドの岳とテールガイドのコバ、そして僕の3人だけで、通常のPhoto Sessionツアー時と変わらない数だ。今までは共同装備のテントや晩御飯に使う食料や水、調理器具などはスタッフだけで担いでいたが、今回は3人しか居ないので、スタッフは今まで以上に重たい荷物を背負う事になり、お客様にも2Lずつ水を背負って貰う事になった。
そして、前日リーダーガイドの岳から共同装備の軽量化案として、「夏用のメッシュテントではダメですかね?」という提案があった。僕もテント生活時代にテストで夏用のメッシュテントを1週間位使ってみた事があった。確かに冬用テントと違ってメッシュなので、風がスース―するのだが春に使うなら全然問題なかった。しかし、お客様にはどうだろうか?という疑問はあった。前日試しにそのメッシュテントを立ててみると、夏用の大型ファミリーテントで6人用なのだが、丁度今回の8人が寝られるではないか。天気予報では風が10m/sくらい吹きそうだが、最低気温はマイナスになるかならないかで暖かい。お客様に貸すシュラフは全部ー30℃対応クラスだ。「よし、これ1張りで行こう!」と決めた。冬用テント2張り持って行く予定であったが、これで2~3kgの軽量化となった。
そんなワケでそれぞれいつものテントツアーに増して重たい荷物を背負う事になったし、ここ数年それほど奥に入り込まなかったが今回のテント場は割と奥だ。過去最高にキツイ荷上げとなるだろう。頑張ろう!!
荷物を背負う時は背負い投げする気分で「うりゃぁぁぁぁぁ~!!」って感じに持ち上げ、背負った途端に体がおかしくなりそうだったが、何とか気合を入れて意気揚々と歩き出した。10:20いざ出発。
上下に2つバックパックというスタイルの荷上げに初挑戦するKさん。
今季最高気温の快晴の中10:20荷上げ開始。中~大型バックパックを使用し、スノーボードを牽引するスタイルが場所によっては楽かな。
2つのバックパックを前後に背負うスタイルの方も居る。
しかし、歩き始めて数10mで事件発生。なんと僕が履いているY社製のステップインブーツアキュブレードの踵部分に埋め込まれている棒のような金具が取れてしまい、全くバインディングに足が留まらない状態になってしまったのだ。この棒部分にバインがロックするシステムなのだから、この棒がなければ留まるワケがない、どうにもならない。僕はステップインシステムのスプリットボードで登ることにしていたのだが、これでは登る事も滑る事も出来ない。「う~ん、どうしよう?…」。どうやっても直ぐに直りそうもないし、応急処置のしようもなさそうだ。僕は暫く考え込んだ。車に載っているスノーシューもステップインシステムだからダメだし、ストラップのスノーシューもバインディングも持っていない。「これは家に帰って昔履いていたシマノ製のアキュブレードブーツを箪笥から引っ張り出して来るしかないな!」。皆には先に登ってて貰い、僕はブーツを取りに一旦家に帰る事にした。いきなり出鼻をくじかれてしまった。こんな壊れ方見た事も聞いた事もねぇ~ぞ!。シマノ製は10年位に渡り何足か履いたが、水が染みてくる事はあっても壊れることはなかった。「くそぉ~Y社めぇ~!!!」。
踵の金属が抜けて壊れたY社製アキュブレードブーツ。これではどうにもならない。
急いで家に帰り、水が染みて使わなくなって箪笥にしまい込んでいたシマノ製のブーツを探した。「え~っと、何処にしまったっけなぁ~?」。今日帰って来ない筈の僕が帰宅すると、家族にビックリされたが、何とか見つけ出し急いで履き替える。「えぇ~っと、両方履き替えようか、それとも片方だけにしようか…」。そんなこんなで片方シマノ、片方Y社という状態で急いで山に戻り再スタート。再び「うりゃぁぁぁぁぁ~!!」と背負い投げのように荷物を持ち上げ、皆が登り始めてから1時間10分遅れで歩き出す。いやぁ~本当にこのテントツアーは毎回なんらかの事件が起こる。今回は今朝起こったヘッドランプ喪失事件だけかと思ったら甘かったぁ~。しかし、家に古いブーツがあったから助かったし、歩き始めて直ぐの場所で本当に良かったなぁ~。あんな事が山奥で起きていたら、滑る事も出来ずにツボ足で歩き回って撮影して、この大荷物を背負って歩いて降りて来るのか?いや、滑っている最中に足が外れていたら大変な事になっていた。大怪我していたかもしれない。そう考えると本当にラッキーだったと思うしかない。「そうだ俺はラッキーだったのだ!!」、そう無理やりポジティブに思うようにして、気が遠くなる程の重たい荷物を担いで一歩ずつ登って行く。たった一人で…。「あぁ~淋しいなぁ~」。この苦しさを分かち合える仲間も居なければ、励まし合う相手も居ない。このツアーのある意味面白さの一つでもあるこの大変な荷上げの写真も撮れないのか。「皆の苦しい顔や、苦笑いの写真が撮りたいなぁ~。あぁ~~~~」。オマケに今日は最高気温13℃と今季一番の暑さだ。皮膚がジリジリと焼けていくのが分かり、まるで灼熱の太陽だ。「あぢぃ~!!おめぇ~!」と、登って行くにつれ、どんどんネガティブになっていく。チセヌプリの旧スキー場のコースを登って行くのだが、女性1人分はあろうかという荷物の重さと暑さ、それに独りぼっちの淋しさで、登りの後半数10歩歩いては足が止まる。「こんなのいつぶりだ???」。しかし、荷物を置いて休んだら、もう動けなくなりそうなので休憩も取らず、喉も乾いていないので一滴も水も飲まず進んで行く。次第に「俺何やってんだ?」という思いが頭を過らないワケでもなかったが、そこは「自分が言い出したツアーじゃないか!」と自問自答しながら一歩一歩登って行く。「あっ、このまま皆に黙って帰宅して、俺が行かなかったら一体どうなるんだろう?テントは俺の背中にある。いや、黙って居なくなるのは失礼だ。岳に『スマン、行くの止めた』とでも電話しようか!」と、意地悪な事まで考え始めた(笑)。そうだ、一歩ずつ前に足を出してさえいれば、いつかは必ず着くのである。そうまた何とかポジティブな自分に戻してみる。そして、その先はもう平らという最後の斜面を登り切る所で皆が休憩しているのが見えた。「おっ、もしかして皆に追いついたのか!?」。皆に追い付こうとも思っていなかったし、追い付けるなんてサラサラ思っていなかったが…。僕が歩き始めて45分、ポジティブな自分とネガティブな自分が右往左往したが、皆が歩き始めて2時間の所で追い付けたのだ。皆の笑顔見れて、皆の声が聞けて良かったぁ~。「おぉ~ようやく写真が撮れる!」。もうキツイ登り斜面は終わってしまったが、荷上げの写真が少しでも撮れて良かった。そして、12:29皆が歩き始めて2時間9分でようやくテント場に到着した。「あぁ~荷物を下ろせるぅ~~!」。
皆に追い付き、ようやくハイクしている写真が撮れた。
今回は明日日曜日にここチセヌプリスキー場で開催される「歩くスキー大会」と丸被りの日程で懸念していたが、、やはりここをテント場にすると幾つもある非常に魅力的な斜面へのアクセスが良いので、悩んだ挙句ここをテント場とした。大会のコースの割とすぐ脇にテントを設営。そして、お客様も手分けして雪を掘り出し、食卓テーブルと調理場を作る。お客様全員去年も参加しているので、場所だけ決めれば皆テキパキとドンドンやってくれる。しかも、昨年の食卓テーブルは人数に対して若干大き過ぎて製作に時間が掛かってしまったが、今回は大きさもピッタリだし、全席風除け兼の背もたれ付きベンチシートとなり、皆2回目ともなれば完成度も上がった上に、結束力もあって時間も短縮。流石である。あっという間にテント場が完成した。
そこでゆっくり休憩を兼ねた昼ご飯と滑走に必要のないキャンプ道具などをデポして、14:00滑走に向けて登り始める。まるで大きな忘れ物をしたかのように背中が軽い。しかし、お客さんの言葉を借りれば「背中は軽いが、足取りは重い」。確かに、全くだ。さっきの荷上げのダメージがあちこちに来てる。腰は痛いし、肩は上がらない、その他諸々…。だが、雪は全面フィルムクラストで最高級なコンディションだ。光の加減か分からないが、取り分け歩き始めて直ぐの斜面がフィルムクラストがギラついていて、僕らを呼んでいた。しかし、その斜面は短いし、テント場に帰る時にも滑れるし、他に良い斜面もあるので後ろ髪を引かれながらもスルーして上を目指した。実は「歩くスキー大会」と丸被りでも、このテント場を選んだ大きな理由の一つに、岳も僕も「あそこの斜面はやりたいね!」と共通して思っていた斜面が2つ存在し、そこへのアクセスが良かったからだった。そこに行くとちょっとハイクバックが大変なのだが、せめてどちらかはやりたい思っていた。どちらも夕焼けセッションにも使えるが帰りの時間を考えると悩ましかったし、皆の体力的な問題もあった。取り敢えず、そのどちらにも行ける場所まで歩いたのだが、お目当ての斜面のコンディションは間違いなく良いと思うが、そこにアクセスする移動斜面の雪付きが悪く、既にハイ松が沢山出てきていた。その移動斜面も大した斜面ではないが背景が良いので、撮るには良いなぁ~と思っていたのだが。それだけでなく、その北面はフィルムクラストがまばらな感じで、雪のコンディション的にも絵的にもさっき見たフィルムクラストでギラギラしている斜面の方が良いように思い始めた。取り敢えず目の前にある海バックの所を滑ってから移動しようとなったのだが、なんか背景の海も山も少し霞んでいて絵的には悪くはないが、無理してやる程でも無い。それよりはさっき見たギラギラしていた斜面に光が入らなくなる前に戻りたい。岳と相談しお目当ての斜面には行かず、目の前の海バックの斜面も岳とお客様1人だけが滑ったが、それ以外の方は滑走希望が居なかったので、急いでビカビカの斜面に戻ることにした。
皆荷上げで疲れているのに結果ちょっと無駄に歩かせてしまったワケだが、一番嫌なのはビカビカだった斜面に戻ったらもう光が入り込まなくなっている事だ。急げ!お目当ての斜面は見えないのだが、隣の山の同じ向きの斜面はもう陰り始めていて焦る。右往左往している内に全部が中途半端になってしまうのか?岳が先にお目当ての斜面が陰っていないか見に行ってくれ、「まだ光当たってますよ!」との無線が来て一安心したが、時間的猶予はあまりない。急いでドロップポイントに移動し、僕はカメラ位置に着いた。「うぉぉぉ~!チョ~綺麗だぁ~!!!!」。丁度、太陽がド逆光の低い位置にあり、フィルムクラストの斜面に一本の光の筋がビッカビカに光っていた。右往左往して無駄に歩いてしまったが、それによって太陽の高さと位置がこの斜面を撮影するのには完璧になり、さっき歩いて通り過ぎた時よりも断然良く、見ただけで感動物の美しさだ。こんなコンディションに出会えたのは何年ぶりだろう?人生において3度目くらいか?そうこれはフィルムクラストを撮影するにはこれ以上ない最高のコンディションである。いや、滑るにも撮影するにもこれ以上ない春の超極上スーパーコンディションである。
この光の筋の撮影はいかにもフィルムクラストを象徴する撮影なのだが、意外と難しい。何が難しいかと言うとこの光の筋は見る人と太陽を結ぶ直線上だけが光っているので、見る人の立ち位置が変わればその光の筋は移動する。この時のように滑り手の背後に太陽がある場合は、滑り手からは光の筋は見えていない。写真的にはこの光の筋上でターンをして欲しいのだが、滑り手からは光の筋が見えていないので何処でターンをすれば良いのかが分からない。何か目印となる対象物があればまだしも、このような一枚オープンバーンだと本当に難しいのだ。今朝もド逆光にしてフィルムクラストの光の筋を撮ったが、朝は僕と滑り手は同じ位置に居て、そこから真っ直ぐ光の筋沿いを太陽に向かって滑るやり方だったから、それ程難しくない。でも今回は数年ぶりに訪れた願ってもいないチャンスだ。しっかりと撮影したい。しかも、出来るだけ全員がノートラックのような斜面にその人のトラックだけが写っているような写真にしたかった。しかし、そう広くはない斜面に滑り手が7名居る。僕が考えていた確実に撮る方法で撮影してみた。結果はバッチリ!!全員確実に思い通りに撮影出来た。光が最後までもって良かった。やったぜ!!ガイドもお客様も滑り終わって全員「うぉぉぉ~!なんだこれぇ~、超綺麗!!!!」と、振り向いて初めてビカビカに光った斜面にビックリしていた。最高じゃないか!!
「こんなの初めて!」という完璧なフィルムクラスト斜面を滑るNさん。綺麗に光の筋の所を滑ってくれた。
パリパリ、シャラシャラ、ザザザァ~っと音も最高なフィルムクラストを堪能するUさん。
皆のトラック。
全員撮り終えた後、記念に1人1人のトラックの写真も撮影した。
滑り終えて振り向くとこの光景。最高・最幸!!
そして、可能ならもう一本撮りたかったので、余韻に浸るのも束の間、ハイクバックして貰ってもう一本撮影した。しかし、その時にはちょっと斜面が陰り始めてしまったのが残念であったが、2本撮影出来て良かった。その後テントに帰る前にもう一本撮影し、17:00テント場に戻った。
佐藤岳の2本目は残念ながら斜面が陰ってしまった。
光が残っている尾根ラインを滑るMさん。
日の入り時刻は18:16だが、ここ最近は18時前頃から夕焼けが綺麗になっていた。僕の経験上では今日は海も山も少し霞んで見えていたので、それ程綺麗な夕焼けにはならないかなと予想していて、お客様が希望するなら夕焼けセッションに行くが、お客様が疲れているから希望しないと言うなら行かなくても良いかなと思っていた。お客様は行くか行かないか悩んでいたが、1人Kさんだけは悩みつつも行きたい感が感じられた。行くならそろそろ準備して登り始めないとという時間に行く事を決め、1人を除いた他のお客さんもそれに続いた。
その時点から夕焼けが当たる斜面に行くのは間に合わないので、近場で労力少なくそれなりに撮れる所を考え、テント場のすぐ裏手の斜面で17:49夕焼けセッションをスタートさせた。最初は勿論ずっと行く気を感じさせていたKさんだ。予想通り綺麗には焼けなかったが、思ったよりかは色付いてくれた。思えば久しぶりの夕焼けセッションである。昨夜の睡眠時間が1時間程度なので夕焼けセッションを欠席したNさん以外は、初めての夕焼けセッションとなった。
夕焼けをバックに滑るOさん。
今回の夕焼けセッションの音頭取りとなったKさん。
薄暮の空からジャンプする小林明弘。
Author: Kage Photo
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