高久智基 BLOG

一匹死んだ 面発生乾雪表層雪崩

Date:2019.05.01 
Category:

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tomokitakaku

一匹死んだ 面発生乾雪表層雪崩
アラスカ2019回顧録

長文です。全文はfacebookに投稿してあります。

この話をしないことには今年のアラスカは語れない。
令和早々になんだが
自分への戒めと新元号最初のトピックとして投稿します。

斜度があると基本的に点発生の表層雪崩は発生する。
なのでアラスカではスラフマネージメントといって流れる雪を想定してラインを刻む必要がある。
点発生表層雪崩は想定内としての滑走となる訳だ。

避けるべきは一気に大量の雪が動く面発生表層雪崩である。

雪崩がどの程度起こりやすいか?
雪崩が起こった場合の被害の大きさ?

私は2つの異なる基準から判断する様にしている。
この日は雪崩は超起きやすい状態と認識していたので、雪崩れる前提で逃げ場所があるラインを決めた。つもりだった。。 選んだラインは標高差500mぐらいの沢地形。途中からボーダーズライトの尾根状にトランスファーしようと計画。
雪崩れた場合は手前のライトか遠くのレフトの尾根に逃げる予定だった。

ひとつ安心だったのは雪崩の先が崖や深い谷では無かった事。

ヘリから降りて一人になった。
新雪に覆われたナイフリッジを慎重に歩いて目的斜面の上と思われる地点に到着。
3m先からは全く下が見えない。

恐る恐る雪質を感じるべくスノーボードを走らせる。
良い感じはしないものの、久しぶりのアラスカの斜度とスケールに痺れる。

広めの尾根の中にある小さな沢にスルリとドロップイン。
スピードが増した3ターン目。
視界のほとんどに蜘蛛の巣のような亀裂が入った。
面発生表層雪崩。
雪崩の先頭は30mぐらい先。

ライディングを続けて、何とか雪崩を抜かすものの、ヒビの入った動く斜面からの情報量が多過ぎて、距離感を失っていた。

雪崩を抜いたとばかりに右の尾根に上がろうとターンした瞬間、フワッと足払いをされた様に1回転。
テールに雪崩の先頭があたったのだ。

生まれて始めて雪煙の中で呼吸困難になった。
怖かった。
そういえばエアーバッグ背負ってたな。グリップどっちだっけ?と考えた瞬間に視界が開けた。

とてもラッキーだったのはスピードがあった事で衝撃がほとんど無く、1回転したもののライディングポジションは崩れていなかった。
ただボードを横にして雪崩と一緒に落ちている最中。

この場合は止まろうとすると雪崩がボードの上にのって操作不能になるので、デラパージのまま雪崩よりスピードを出せると滑走可能となる場合がある。 「エアーバッグを引いてしまうと今日はもう終わりだな」という思いも浮かんだが、雪崩と一緒に滑りながらも体制は保っていたのでグリップを引くことを踏み止まった。

最終的には滑ってボトムまできたものの全身が興奮している。
怪我をしていないかと何度も身体を触って確認した。

良かった。
どこも痛くない。

通常であればガイディングでもフリーでもこれにて本日終了という出来事。

神さまご先祖さまありがとうございます。
守ってくれて、頂けたチャンス
想定内といえばそうだったし、トラウマになるのが怖かった。
流石に斜面の方角を若干変更しましたが、その後も3本の滑走を続けました。

初日の1本目で雪崩に巻き込まれてしまった事は恥ずべき事。
結果幸運に恵まれて怪我もショックもなかった状況に感謝します。
おかげさまで2日目以降は心身ともにリラックスして挑む事が出来ました。

もちろん安定した良い雪はあるしそれを選ぶべきです。

目的は何なのか。
急斜面で良い雪を求める事は雪崩を想定して滑る事でもあります。

行くと決めたのなら想いを達成し、身の安全を守るには
滑走技術とインスペクション技術
が滑り手にとって重要である事を痛感しました。

これからもガイドとしての判断と引率技術と同じく、滑走する上での技術も磨いて行こうと思います。

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Author: 高久智基

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